拡伸工務店の下小屋を見学しました。
下小屋とは、大工が建築に使用する材料を加工するための場所であり、木材を保管する倉庫でもあります。
下小屋では、主に、上棟までの墨付けや刻み仕事を行います。
墨付けとは、木材を加工する際の目印でもあり、上棟の際に、資材をどこに建てるかという基本の記号を記すことをいいます。
刻みとは、そのままでは組み合うことのできない木材に、木と木が組み合うような凹凸の細工を施し加工することをいいます。
刻みにより、はじめて柱となり、梁となり、お互いに組み合って家を支える軸組ができます。
上棟後は、内法材と呼ばれる敷居や鴨居など柱の内側に組み込む造作材の下拵えなどを行います。
拡伸工務店では、広い空間で、木材の加工機械を設置し作業を行っています。
古くは、棟梁にはなくてはならない作業場が下小屋でした。
下小屋を見学していたら、過去の上棟式の五色の旗がみつかりました。
(ちなみに、東から青(緑)・黄・赤・白・紫と並ぶそうです。青は春を表し木の神。黄は土用を表し土の神。赤は夏を表し火の神。白は秋を表し金の神。紫は冬を表し水の神。これらを祀ります。上部の梵天には、七・五・三の線が書かれ、七は七曜星・宇宙、五は五行説、三は天地人を表すそうです)
以下の動画でご覧いただけるように、上棟式とその際に親方の歌う「木遣り」の話を伺いました。
現在は、上棟式を行うことが少なくなってきました。
ハウスメーカーによる家づくりが増え、その工程が分業となり、様々な業種の職人の時間を上棟式に集めるということが難しくなったことと、お客様も、大きな金額のかかる家づくりの中、コストを少しでも抑えたいという正直なお気持ちから、簡素化、あるいは行わない選択が増えたためと思われます。
上棟式は、住まいの構造材を見ていただく唯一の機会でもございます。
無理のない範囲で、上棟式を行ってみてはいかがでしょう。
現在、拡伸工務店にて建築中の新築住宅の上棟式が12月に行われる予定です。
こちらの様子もお伝えしていきたいと思います。
棟上げの時にお面を添えたり女性の七つ道具と呼ばれる(口紅、白粉、櫛、簪、鏡、かつら、こうがい)を棟の上に飾って納める地域があります。
実は、上棟式に納める女性の七つ道具にはこんな逸話があります。
昔、有名な大工の棟梁(長井飛騨守高次 ながいひだのかみたかつぐ)が、大報恩寺を施工中に、玄関の柱を1本短く切り過ぎてしまい、翌日の建前に間に合わないと思い悩み途方に暮れます。
妻のお亀さんは、自殺まで考えるほど思い詰めている夫に酒を勧めて眠らせ一晩中考えた末、枡を使って補修するという名案を思いつきました。
建前の朝、目覚めた夫に無言で三つの枡を差し出しました。一升・五合・一合の枡を組み合わせた「枡を継ぎ足しての補修(枡組)」で、建前を迎えることができました。
しかし、棟梁の名声を守るため、妻のお亀さんは命を絶ちました。
女性が夫の仕事に口を出すことが許されない時代。女姓の口添えで完成したことが世間に知れては棟梁の名声を汚してしまうと、すべてを秘密にするためだったと言われています。
(多くの伝承では、夫の棟梁が発覚を怖れ、妻を殺したとも。それを悔やんでの弔い説が流布されています)
棟梁は上棟式当日(1227年12月26日と伝えられています)お亀(阿亀)さんの名にちなんだ福の面を飾り、妻の冥福を祈り、永久にこの本堂が守られる事を願ったといいます。
この言い伝えにより、お亀さんは大工の守り神となったといわれています。
大報恩寺は安貞元年(1227)に建立され、本堂は幾多の戦火を免れ、800年近く経った今も当時のまま残る京都市内(京洛)最古の木造建造物として国宝に指定されています。これらのことから、災難から逃れ長く残る建築を願い、今でも棟上げの時にお亀さんの面やお亀さんの「女の七つ道具」を納め、お亀さんを偲び永久に頑丈な建物になりますようにと祈願するために「女の七つ道具」を納めるといいます。
お多福顔には様々な徳があるとされています。
・広いおでこは、自らのおごりの高さを戒めるように。
・垂れた目尻は、どんな状況であっても笑っているように。
・右頬は父親、左頬は母親を表し、真ん中にある低い鼻が自分自身。(孝行の心を表します)
・おちょぼ口は心の内をすべて正直に話し、隠し事をしないように。
女の七つ道具は「本音と建て前」(妻の本音と夫の建前を気にする象徴)の由来といわれていますが、お亀さんの象徴が、口は災いの元と黙るのではなく、正直で隠し事がないように・・・と捉える方が、夫婦円満・家族安泰を願う祈念の本音かもしれませんね。
拡伸工務店では、断熱のあたたかな家づくりを通じ、住まうお客様が、いつまでもあたたかなぬくもりある家庭生活を送っていただけることを願って、一軒一軒、心を込めて施工しております。
よろしければ、「上棟式を行いました」の記事も合わせてご覧ください。